手掌多汗症は病院で治療できます
手のひらの多汗症(手汗)の汗の出る量は、時間帯やその日の気温、緊張の度合いによっても違いますが、目安のために次の3段階に分けています。
レベル1 手が湿っている程度。触ると汗ばんでいることがわかり、光を反射して汗が光る。 レベル2 手に水滴ができて濡れており、見た目でも汗をかいていることがわかる。 レベル3 盛んに水滴ができ、汗が滴り落ちる。 |
多汗症は、身体のさまざまな部位に異常に発汗する病気です。その部位はわきの下だけでなく、手のひらや足の裏、頭などにも及びます。
手のひらに異常な発汗がみられる場合を医学的には「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」と呼びます。
発症に男女の差はなく、治療を受ける患者さんは10代から30代のかたが多くいます。
手汗で悩むのは「紙に触れていると、紙が濡れたり、ふやけてしまう」「握手ができない」「手をつなげない」「スマホが反応しない」「スポーツをするとき滑る」などです。
周りの人は「汗っかきな体質」くらいにしか思っていませんが、本人にとっては悩みが深刻だったりします。
自分で試せる方法もありますが(制汗クリームなど)もし効果がなかった場合でも、治療方法があります。
手掌多汗症は皮膚科で治療が可能です。
最新の治療方法として、内視鏡を使った手術が注目されています。
手掌多汗症の原因と症状
多汗症の原因は、まだはっきり解明されているわけではありません。
汗をかくしくみは、自律神経のひとつである新陳代謝を活性化する神経が機能することによって発汗しますが、その神経が機能亢進の状態になり、汗を分泌するエクリン腺が活発になり多量の発汗が促されます。
緊張すると誰でも発汗することがありますが、手掌多汗症の場合は緊張がそれほどじゃなくても発汗してしまいます。
リラックスしている睡眠中は比較的発汗量は下がるという実験結果が出ています。
これまでの手掌多汗症の治療法
今まで行われていた治療法は、心身療法(心理療法、自律訓練法、精神安定剤による治療)、薬物療法(プロバンサインという神経遮断薬やアルミニウム配合の外用制汗剤による治療)のほか、イオントフォレーシスというイオン発生装置を使った治療(水の中に手を入れます)や、胸部交感神経遮断手術がありました。
しかし、薬物療法やイオントフォレーシスは一時的な効果はみられるものの、根治的な治療には至っていませんでした。
また、胸部交感神経遮断手術は多汗症に対して確実な効果を発揮しますが、開胸手術が必要でおおきな傷跡も残るのであまり普及しませんでした。
でも、近年は内視鏡を使った手術が発達し、傷跡も小さく患者さんのダメージも少ないことからETS手術が行われるようになってきました。
手のひらの多汗症の内視鏡手術(ETS手術)
″内視鏡手術とは、皮膚に小さな傷をつけ、そこからカメラのついた細い管を入れて患部を見ながら手術する方法をいいます。
手のひらの多汗症(手掌多汗症)では、腋の下の皮膚を2~4ミリほど切ってカメラを胸腔(きょうくう:肋骨で囲まれたスペース)に入れ、モニター画面で胸のなかを見ながら、背骨の近くにある交感神経の束を見つけて切断します。左右両方の交感神経切断が必要です。”
参照元:四谷メディカルキューブHP
手術時間の目安としては、両側で10分程度です。片側で3ミリほどの傷ができますが、傷あとは目立たず、術後の痛みもほぼないということです。
術後すぐに帰宅でき、翌日からは普通に生活できます。健康保険が適用されることも心強いです。
手術の副作用について
手術後は、手のひらの汗は確実に減ります。
脇の下や首、顔や頭の汗も少なくなる場合があります。
副作用としては、発汗は体温を下げる機能がありますので、手術後に汗が少なくなることによって体が暑く感じることがあげられます。
また、胸や大腿部の汗が多くなったと感じる場合もあるようで、割合は30~70%です。
これは代償性発汗と呼ばれる現象です。個人差が大きく、どの程度の代償性発汗があるかは手術前に予測することができません。
しかし、その場合は暑いときや運動時だけなので対処できる範囲にとどまります。
また、汗が止まることによって皮膚が乾燥してしまうという症状もみられます。手のひらがカサカサする、冬にひびわれする、といった新しい悩みもでるようです。
これには保湿液やクリームなどで対処していきます。
それでも、手汗で悩んでいた人の95%以上は手術してよかったと答えています。
この記事は手術を推進するものではありませんが、悩んで暗い気持ちでいるよりも「解決策がある」と思うだけでも気持ちが軽くなると思います。
専門家に相談してみる、というのもひとつの手段ではないでしょうか。